谷村思亜のさくらうた

桜の歌が毎年たくさんできます。  #短歌  #桜  #谷村思亜

2010年のさくらうた

寒風に一つ開ける桜かな


耐え続け 忍び続けた者にこそ 花咲き乱る春は来るなり


薄水の弥生の空にやわらかき春色の花ほころびにけり


桜咲くベイビー色のブーケかな


春だよと枝先の花は告げにけり 幾千の鳥を枝枝に乗せ


露のごと枝先に花はほころべり 夢の刻まであともうすこし


何処より集いいでたる鳥たちは桜花咲く枝枝におり


鳥たちの声高らかに告げにけり 桜の世界生まれし事を


春の日にうずくごとくに生まれくる 薄紅の花世界を埋めよ


真っ暗な冬も汝をはらみしか 桜の花よやさしき花よ


あふれ出るやさしさはその花の色 たわわに愛を降り注ぎたり


淡き香を人に知られず渡してる 花の世界の始まる予刻

 

世を包み人の心を包むごと やさしき色の花は満ちたり


四方より 鳥のいで交う 花の刻


その色は甘く心をとかすごと 桜夢想の中よりの花


無垢の白 愛の赤さを織りまぜて 無償の思いを花は降らせる


頭上には桜の思い今日ありて 晴れやかなる日寿がれる日


憂いをもなかったことにしてくれる あまりにやさしきその花の色


我々も桜も冬に死に絶えて 一回きりの生を春受く


そこかしこ立ちて桜は春を告ぐ やさしき色に思いを込めて


生きんとす光の意志の色のごと 桜天との架け橋の花


始原とはその色なのではなかったか 桜は誕生そのものの色

 

春の日と在るを寿ぐごとく咲く 桜善意の限りを込めて


瞬間に生きよと告げているごとく 善美の花は今日ぞ開ける


夢じゃなく桜の森は今日ありて 誘うごとくに花を揺らせり


言葉なき花のささやく言葉とは さややさわさわ生きてあれかし


街じゅうを祝福の色に花は染め 奇跡の刻は今年も来たりぬ


晴れやかなうれしき今日の理由とは 桜の花の今咲きありぬ


永遠の一刻が今展がりぬ 無限の色を花はたたえて


どのような悲しき人にも幸いはこういうものと花は開けり


心奥に花の心の触れにけり 無尽にやさしき無尽の愛


その色は一番あってほしい色 全き善の花よ桜よ

 

永遠に咲きて広がれ桜花 汝の色は無二に麗し


春ゆかば桜の花もゆくならば 我もゆきたし桜の果てへ


見るごとに夢のごとくに思われる 桜の花のやさしきさまは


燕の夢見るように飛ぶ空の下に桜の今日ぞありける


桜咲くごとに目を見開かされる この世にこんな美があることに


桜とはきっと花ではないんだよ 神聖至高の善の顕現


桜花人は心を奪わるる そのやさしさの限りのなさに


雨雪も風もその枝に受け止めて 花は咲くらん永久なる今を


捨てがたしこの世に桜あるのなら 奇跡の花は今年も咲きぬ


春と時ふたつのもののはかなさを 花は教えるごとく咲くらん

 

せわしさに忘れてしまうべからずや 桜という美が世にあることを


忘れまい桜の花の輝きを 桜の花のやさしきさまを


美とすにはあまりにやさしき花の色 奇跡と幸を表している


花森に埋もれて消えてゆけるなら それより上の歓びはない


花森はやさしき色に空を染め 一刻の夢桜咲くらん


花生まる薄紅の色ふくふくと三千世界を埋めるがごとく


現在も過去も未来もその色で祝福すごと桜咲きたり


一年の全ての幸が今まさにここにありけり桜咲きける


花に花重なり重なる薄紅の桜の次元ここに現る


花ありて時空薄紅色に染む 良夢以上の麗しき夢


耐えてこそ桜の花の結ばるる やさしき色にあるは切なさ


花天井薄紅色の透きとおる 無限の善意無限の花の

 

一年に一生に一度めぐりくる 春よ桜の咲ける時刻よ


花に雨床しき時ははかなくて春よ桜よ今しばしあれ


天も地も薄紅色の深き森 御国のあるを花は示せり


その色は御園の国のパスポート 汝よ忘るな桜の色を


どんなにか残酷でつらき現実も 彼方に桜の国はありたり


止まぬ雨一粒ごとに散ってゆく 花の悲しみ抱きて眠らん


ありがとう一生の思い花に告ぐ ほほ笑みながら花は散るらん


その色の中へと消えてゆくように 桜の国は消えてゆかなん


透明の国へと帰ってゆくように 別れを告げつ桜散りゆく


傾ける陽に輝ける名残り花 我が心永久にとどまれる場所


その色は誠に愛の姿なり 雨に花の香淡く立ちたり

 

例うればこの世に奇跡あるならば 桜の咲くは尊き奇跡


その色で心にかかるさまざまを桜の花はほどき落とせり


花嵐この上もなき無残かな


雨よ風よ降るな吹くるな愛おしき花の景色を連れてゆくるな


淡やかに淡やかに桜消えてゆく 淡やかな色を枝に残して


最上のやさしき色の名残りつつ はかなくなりぬ桜散りゆく


花あとを慰めるごと青空に飛行機雲とツバメありたり


薄紅のやさしき気配残しつつ 桜の国は消えてゆかなん


消えてゆく花の気配に包まれて 夢見を願いつ眠りに就かん


名残り花まばらに花を残しつつ 淡やかなれる刻をとどめり


冬越えし者にほほ笑みかけるごと 桜咲くらん桜咲くらん

 

名残り花幾万枚の花びらで我が魂を包み給えよ


薄紅の花のじゅうたん歩くのは我も世界も忘れてしまう


杏色を残して消える桜かな


花散りてやさしい色の地に残る


やわらかき花の王国名残りけり


やわらかき花の消えゆく刻の間に水玉のごと花は舞うらん


風起きて花びらの立つ春の終


やわらかく淡き若葉のさざめきに花の面影とどめおかれり