谷村思亜のさくらうた

桜の歌が毎年たくさんできます。  #短歌  #桜  #谷村思亜

2012年のさくらうた

この苦界地獄の世にも春は来て こぶし木蓮梅桃桜


この世とは思えぬ色に花は咲き さくらさくら神秘深き美


花前のこずえに鳥の宇宙かな


見るごとにやさしき色のやさしさよ さくらさくらこの春もまた


さくらさくら 汝の無二のやさしさは汝の無二のその花の色


雪桜 薄紅と白の差はあれどこの世ならぬ美 世を染めにける


悲しみの深き人ほどその花は切なきほどにやさしく咲ける


日を受ける花も陰りになる花も 永劫のうちまたとなき様


梅こぶし散りゆく今日の真昼日の青空の中 桜満つらん


清らかな愛と清らかなる美とは桜の花の咲けるその様


花の陰 花の光ぞ美しきめでたき時よ 桜開ける

 

永劫のうちに命が生まるよに 桜は春の一瞬に咲く


花愛す人ほど悲しきこの世界 美と悲しみは近似している


無二の色 花の展げるこの今日は無二なる時ぞ 春のたけなわ


何千度生まれ変われど会えぬなら無意味な事よ 桜の花よ


特別な特別な夜が進行す 今桜花世に開きけり


幻の夢の向こうのその向こう 桜の花はそこから来たり


万花と生まる今年の桜かな


万節の分の値のその花に願うは一つ永久にあれ


花の陰 これほどやさしきものはなし 見えないはずのものの現われ


どれほどにつらき思いに耐えてきてその色に咲く桜の花よ


我が道の両わきに桜咲かあらば 無限無上の歓びなりき

 

やさしさのはかなき事を示すごと 花は咲くらん夢の間に間に


人々の日々から最も遠き色 桜咲くらん永久の刹那に


春という季節はさくら色してる やさしく淡く人を包めり


困難の果てに忘れしその色を花はやさしく咲いて示せり


幸というはかなきものの事のごと 桜の咲ける時のはかなさ


切なさと美とやさしさの極まれるその花の色 桜花咲く


命いっぱい生きる者ほど愛するは命いっぱい咲く桜花


耐えられぬ苦しみの果てに咲く花の耐え難きほどの美しさかな


どの花も決してもたぬその色はさくら桜やさしき限り


やさしさの舞踏に人誘わるる この春もまた桜咲きける


一年に七日ばかりのその花は命の限りやさしさに咲く

 

悲しみと悲しみとの間におかれたる日のごとき色 桜の花は


どの胸も焦がるるほどに希求する色に桜はこの春も咲く


やさしさの至上の色のその花は この春もまた愛を告ぐなり


その色の中にあふるる愛を込め美しすぎる花は咲くらん


我は今さくらの国の中にいる 何もいらない命も何も


限りなく限りなく咲け桜花 世々に展がれその美しさ


その色の中に愛を探すなら 求むる以上に花は応える


花なくて寂しすぎる日々だった花ある幸を表しきれず


邂逅という名の奇跡この春もやさしき花と相果たすなり


花天井 花永久にあるならば 美しきもの永久ならば


花と生き花と眠れるこの今日の深き喜び桜咲く時

 

花流る 桜らしさを貫いて


花の色花の気配の世にありて浄福なりき春の一刻


今この世 花の世界に包まれて 至上至福の時が流れる


美しきものとはきっと悲しみの向こうにありぬ 桜開ける


桜木の切なきほどのやさしさは春一刻のその花の色


百花繚乱 今年の春のめでたさよ 何を慰むための祝祭


苦しんで苦しみぬいた者にほど 狂おしきほどの美を花は見す


慰めと祝福のまだ許されてこの世にありぬ 桜花咲く


この世とは思えぬ色と景色なり 桜の花の咲き誇る世は


花の陰 続けよ続け永久にその下を我歩ませ給う

 

上下四方 桜の花に囲まれて思いもかけぬ受福の刻


そちこちに立ちて桜は春を告ぐ 人々に春が来たを寿ぐ


春という人を慰む季節には人を慰む花の咲きけり


一年に七日の花に会うごとく人よ人との邂逅をなせ


この春も花ふところに入るらむ 在る事の幸今だけ思う


花と鳥 好きなものだけに囲まれて幸福すぎる時が過ぐなり


一年中思い焦がれた時が今さくらさくら桜咲くらん


花愛す思いは年々深まって同体化できたならいつか


花よ花 その色姿に大きなる愛いっぱいに表されたり


花房の光り輝くその様を忘れてしまう事の悲しさ


長き冬耐えし者らを称えんとかほど桜は美しく咲く


悲しみを最も慰む色なりき さくらさくら天意のごとき

 

さくら色 存在するにはこの世とはあまりに険しきものとぞ思う


その色にこの世の汚濁引き受けて流るごとくに花は散るのか


花びらのひらひらと舞う町中に惜しき季節の過ぎてゆくなり


桜花 言い表し難きその色は言い表せぬほどのやさしさ


花の国 無尽蔵なる花びらの一つ一つに愛込められて


この世にはこのような美が隠されてありしか桜神秘の花よ


これほどにやさしき花は他になし 悲しき胸にほどぞ染む色


忘れじの色に桜は咲き初めて無数の事を表している


その色は最も覚えていたい色 人世と最も遠き色なり


花ありて喜び色の時は過ぐ万物の心慰むる色


花よ人は汝を理解せぬままに 汝は今年も散ってゆくのか

 

深く深く花の心に入りたし 焦がれた色にそう焦がれてる


花ありてなんと慰む事だろう 春という名の夢の顕現


悲しみも不安も痛みも苦しみも全てを花が報いてくれた


花咲きて我が満願は成就せり 真冬の向こうにありし浄福


花の国 雨の向こうにまだありて 一刻も長くこの世にぞあれ


美しき美しき国消えてゆく雨の中花の散りてゆかなん


雨に耐える桜の花の愛しけれ 永久なるものはなきと思えど


さくらさくら 最も尊きその色よ 今しばしあれもうしばしあれ


美しきものの消えゆく悲しさよ 桜に雨の降りしきるなり


さくら色 生を通して共にあれ 生きるには遠き色と思えど


人生という名の冬を越えたなら花に再び会えるだろうか

 

花愛す心以上にその花は豊かな愛を人に示せり


名残り花散ってゆくのかこの春も人智を超えた美のはかなさよ


白に紅添えたる色の愛しさよしずかに花の王国は咲く


花と交わす約束以上に尊きはなくて命より尊くて


見上げれば豊かな愛がそこにあるさくらよさくら天上の花


万人の悲しみを花慰めてうなずきながら散ってゆくなり


花よ花よ 寝ても覚めてもなれのあるこの一刻の値はつかじ


やさしさと美と永遠性を併せもつ花ある日々よ幻の日よ


さようなら 花の言葉の聞こえしに私も追って行きたく思う


褪せながら散りながら花消えてゆく別れの時よ今しばしあれ


花まだき やさしき色の残りけり淡やかに花の時薄れゆく

 

現から最も遠き場所なりきやさしき色の花の王国


花落ちて 夢の国への標かな


天と地にやさしき花の色ありて夢への道が開かれている


これほどにやさしき国に花よ人いくたりがたどり着けるのだろう


雪よりも清らかなるはさくら色至善の愛を込められたれば


善きものは最もつらきあとに来るそを教えたる桜の花は


花まだきやさしき色の残りたり夢と現の交錯す日々


耐えてこそ花は咲くのか美しくその苦しみが大きいほどに


花よ花 地に残りたるあとわずかかそけき言葉ささやいている


やさしければやさしいほどにはかなけれ桜の色よそのやさしさよ


花の日々過ぎゆく事の切なさよやさしきもののはかなき事よ

 

花なくて生きらるだろうか我はまたやさしき色よ消え給うな


無上なるやさしき色の減ってゆく神なる愛を花はたたえて


汝の国に我も連れ行け桜花我が全霊を込めにし願い


花吹雪一つ一つの花びらの花の思いは狂おしき愛


名残り花 夕陽を浴びて一層の永遠性を帯びて輝く


花消えて 夢の時間の終わりかな


最終の桜吹雪は有終の美なる景色をそよがせるなり


名残り花 小雪のごとき 白さかな


名残り花 夢への扉あとわずか


花のあと 花の骸の赤さかな


別れ花 原色前のわずかかな

 

薄紅の雪降りしきる花の終


花びらの風に名残りて夢の終


花びらの風に帰りぬ夢の国


春憂い花は別れもやさしくて


薄紅の雪降る花の終わりかな


薄紅の雪片じゅうの花の終


春冷や花の面影名残る頃


そちこちに薄紅の雪 花の終


葉桜や 地に薄紅の忘れ物